11/10/2020

カーディナルC3 インプレ

カーディナルC3使いならいつかは必ず訪れるXデー。避けて通る事は許されないこのリールの通過儀礼みたいなベールスプリング折れ。それは毎日少しづつしかし確実に忍び寄り、ある日突然襲いかかってくるのです。

「ぼりっ」

 その日は10月下旬、ホームでセイゴボイルを目の前に「今日は頂き!」感満載の一匹目をしとめた直後の事でした。一匹目はセイゴサイズ。ボイルを前に焦った結果、結び直したスナップが二つも着いてる焦りすぎ↓

この日ボイルの出方からして「つ抜け」の可能性は十分ある、それだけ数が入ってる事が確信出来ていた。さぁ次行くぞってな感じでベールを起こした瞬間、手元に伝わる嫌な感触。
「ぼりっ」

あっ…やっちまった…。

不思議と一瞬で悟るもんなんですねC3使いは。ぱかぱか〜っとベールが力なくふにゃけてしまいました。あ〜ついに来たかって事なんですがC3を知らない方は何が「ぼりっ」と来たのか意味不明だと思いますのでこちらの画像を。
これベールアームを元に戻す為のC3のスプリングなんですが、この二回転トーション式と呼ばれるスプリングが発売当初からすぐ折れる事で超有名なリールなんです。C3と検索すればもれなくこのスプリング折れが着いてくるほど昔から各地で被害が多発しています。
このリールを使っていこうと考えるヒトはベールスプリング折れともつきあっていく事を覚悟しなければなりません。切り離して考える事は出来ない二つで一つのリールなんです。

このリールは昨年暮れに某オクで手に入れたものなので、今回折れたベールスプリングがどれほどの期間このリールに装填されていたのかはわかりません。ただ手元に届いてから釣りに出た日数は10日もない7日ほどでしょうか。一日100回ベールを起こしたとしても700回ほどしか動作させていません。

折れた右側のバネと強化バネとして現在売られている左側のバネをよくよく見比べてみると、線径はほぼ同じに見えますが内径は折れたバネの方が小さいです。強化バネの方が内径は大きくなっています。この部分が強化バネと唱ってるポイントなんでしょうか。と言う事はこの折れたバネは純正品(もしくは純正互換品)なのかもしれません。ただし30年も前からずっとこのリールの中で一本で頑張ってきたとは考えづらいので何度か交換されているはずですけどね。

C3使いはリールを手に入れた瞬間から予備のスプリングを購入しいつでも入れ替えられる様にしています。自分も何本かストックしてあり常備してるんだけど、今回は現場で折れた(ほとんどの場合釣りの最中現場で折れる)ので、夜間スプリングの交換作業はパーツの紛失に繋がる危険性が高く躊躇していました。ところが目の前では絶賛ボイル継続中。大概釣りの最中にしかもいい場面で折れる話をよく聞きます。なんでこんな時に折れるんだ!おかげで大事なチャンスを棒に降っちゃったじゃないか!もうおまえみたいな役立たずは用なしだ!二束三文で叩き売ってやる!って事で安く出てきたC3を某オクで買えたのは今や昔。2020年C3は記録的な高値で取引されている。どうしちゃったんだC3。C3はC3だろ。今も昔も変わらないスプリング折れたら諦められて売りに出されるそんなリールじゃなかったか。

話はそれたが普段だったらスプリングが折れたらそこで本日の釣りは終了である、おしまい。もしくはフタを開けてその場で交換。だが今日は違う。夜釣りで真っ暗なのでスプリング交換作業はパーツ紛失の危険性を孕んでいる。しかし年に数回しか遭遇出来ない目の前ボイル祭りなのだ。更に加えてまだ一匹しか釣っていない。これからって時なのに諦めて帰れというのか、この光景を前にして。

ベールアームに覇気がなくぱかぱかな状態になってるだけでキャストする事は出来る。キャストした後アームが開かない位置に戻して指でラインローラーに糸を引っ掛ければ巻けない事はないな。そんな事を何投かしながら練習していくと次第にキャストから巻き上げまでの一連の動作が出来る様になってきた。

「よし、コレでもう一匹だけ釣れたら今日は諦めて帰ろう」

そう思って狙っていった何投目かでドスン!と重いバイトが手元に伝わる。よっしゃコレでかいと思ったのと、ベールアームどないしよ巻き上げられるかなっていうリールの心配がほぼ同時。C3はもともと非力なリールだしそれに合わせて宵姫華77っていうロッドを使えばスズキサイズがかかったら面白いだろなって考えで揃えた道具立て。

今それなりのサイズがヒットして夢叶ってる最中なんだけど、さらにベールスプリングが折れちゃってるので、なんかハンドルが折れた時と同様に引きを楽しむ余裕が全然ない。ベールが開かない様に恐る恐る巻き上げて相手が走り出すと両手で押さえる。「ちょ待てよ。巻けない巻けない」とか「うわ〜タイムタイム!」とかおよそ釣りしてる時に出てくる台詞とは思えない事を連発。そんなやり取りを二、三分続けただろうか。ようやく観念した魚はベイトをたらふく食ってるムッチムチぱんぱんのグラマーな魚体。多分ぎり60くらいのスズキサイズ。
パンパンな魚体とは対照的なだるんだるんのC3ベールアーム。しっかりしてくれよマジで。

スズキサイズがC3でヒットしたら、という思いで一年準備してきたのでようやく思いが叶った目の前の光景に感無量。今までのシーバスタックルだったらこの程度のサイズはそれなりだったけど、C3と77で掛けるとやり取りが何倍もスリリングになるし引きも強烈。さらに今回ベールスプリング折れというC3ならではのトラブルが重なって、なんか色々とドラマチックになった。

若い時だったらベールスプリング折れた時点で癇癪起こしてC3ぶん投げて帰ってたかも知れない。これはある程度年取ってC3っていうご老体リールでのんびり釣りしようっていう境地に至って初めて獲れた魚かもしれない。ベールスプリングが折れたタイミングで今期最大魚がバイトしてくる自然の摂理も不思議なものだし、60cm程度のサイズでもC3の道具立てで釣り上げる事で、今年一年のメモリアルフィッシュになったのは間違いない。不便は沢山あるし結構イライラするんだけどやっぱこのリール面白い。

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